老後2000万円問題をきっかけに資産運用を始めようと検討している方も多いと思います。
しかし、どうしても元本保証のない投資に馴染めず、資産運用をしたくないという方もいるでしょう。
老後2000万円問題を解消するためには、資産運用は必須なのでしょうか?
今回は、資産運用なしで老後2000万円問題を解消できる可能性のある方法をご紹介します。
どうしても資産運用をしたくないという方は参考にしてください。
当記事の要点を簡潔に確認したい方は以下の動画をご覧ください。
資産運用をせずに老後2000万円問題は解消できる?
老後2000万円問題をきっかけに資産運用を始めようと考えている方も多いのですが、老後資金を準備するために資産運用は必須なのでしょうか?
結論から申し上げると、老後資金を準備するのに資産運用は必須ではありません。
資産運用だけが老後資金を準備する手段ではありません。
資産運用をせずに老後2000万円問題を解消するためのポイントは下記のとおり。
- 将来受け取れる公的年金額の目安を確認する
- 生活のダウンサイジング
- 現役で長く働き、老後を短くする
- 公的年金の繰り下げ受給
それぞれを次項以降で解説します。
老後資金は2000万円で足りる?足りない?
なお、「老後2000万円問題」で「2000万円」という数字がひとり歩きしていますが、誰もが老後に2000万円不足するわけではありません。
老後に2000万円が不足するのは、金融庁の報告書に出てくるモデルケースの場合です。
モデルケースは、厚生年金に40年加入した夫65歳と60歳の妻(専業主婦)の夫婦(無職世帯)。
よって、2000万円も不足しない人もいるでしょうし、逆に不足額が2000万円どころではない人もいるでしょう。
家族構成や現役時代の収入や支出などによって老後に必要となる額は異なります。
大切なことは、一人ひとりが自分に不足するであろう老後資金額を確認することです。
将来受け取れる公的年金額の目安を確認する
資産運用なしで老後を乗り切るために重要となるポイントの1つが、老後に収入の柱となる公的年金の受取額を把握すること。
老後の生活を安定させるためには原則、公的年金の受取額内で暮らすことが重要となります。
老後を公的年金の受取額内で生活するために重要となるポイントが年金の受取額を知って、老後の収入をイメージしておくこと。
そのために必要となるのが、「ねんきん定期便」のチェック。
特に、50歳以上の方は「ねんきん定期便」に現在の保険料納付状況が続いた場合の65歳から受け取れる年金額が記載されています。
また、50歳未満の方に関しては「ねんきんネット」を利用すれば、年金の受取額を複数パターンでシミュレーションすることが可能。
公的年金の受取額に合わせて、早めに生活をダウンサイジングしておくことが重要です。
早めに年金額を確認しておけば、増やす手立てを打つこともできます。
生活のダウンサイジング
上記の通り、資産運用をせずに老後の生活を安定させるには、普段の生活では資産を取り崩さず受け取る年金内で生活すべき。
ポイントは受け取れる年金額を確認し、その範囲内に収まるように生活をスリム化するよう家計を見直すこと。
早めに年金額に合わせて家計をダウンサイジングしておけば老後に向けての貯蓄も可能です。
老後資金をいくら準備しておくべきかは、何歳まで生きるか分からないので、正確には分かりません。
よって、収入の範囲内(公的年金)で生活するという考え方は非常に重要。
なお、公的年金のみで老後を生活するとは、「普段の生活に関して年金収入のみで賄い、生活費のために資産(預貯金など)を取り崩さない」ということ。
よって、老後に備えて全く蓄えが不要というわけではありません。医療費や介護費用については、別に準備が必要。
あくまでも老後の生活費は公的年金だけで賄うべきということですが、介護費用、医療費などを考えると公的年金とは別に夫婦で1,500万円程度の備えは必要というデータもあります。
現役で長く働き、老後を短くする
資産運用をせずに老後を安定させるには、可能な限り長く働くことも重要なポイント。
生活費のダウンサイジングだけでは限界があります。
健康で働ける期間を長くすれば、年金収入だけに頼る期間を短くすることが可能。
下記記事で解説した通り「老後の経済的な不安を解消する最も簡単な方法」は老後を短くすること。
つまり現役で働く期間を長くすること。
老後は自らの意思で長くすることも短くすることもできます。
老後が短くなれば、必要な資産額は少なくなり、生涯現役なら老後問題そのものがなくなることに。
また、老後を短くすることで、下記のような効果を期待できます。
厚生年金への加入で年金額増
働き方にもよりますが、厚生年金への加入で年金額を増やせます。
厚生年金には70歳まで加入可能。
保険料を支払った分だけ、受け取る際の老齢厚生年金額が増えます。
年金の繰下げ受給で年金額増
次項でも解説しますが、公的年金を受け取る年齢を65歳から繰り下げることにより、年金額を増やすことができます。
働いて収入に余裕があるのであれば繰り下げ受給も選択肢の1つ。
公的年金を繰り下げると下記の通り、年金額が増えます。
- 70歳まで5年繰り下げた場合、年金額は42%増
- 75歳まで10年繰り下げた場合、年金額は84%増
なお、75歳までの繰り下げは2022年4月から可能となりました。
老後資金の積立も継続できる
長く働いて生活に余裕があれば、老後資金の積立も継続できる可能性があります。
公的年金の受け取り年齢を繰り下げる
公的年金の支給開始は原則65歳。
しかし、希望すれば最大60歳まで繰り上げることと、75歳まで繰り下げることが可能。
老齢年金の受け取りを繰り下げるごとに1ヶ月で0.7%、5年で42%増えます。
更に2022年4月からは75歳までの繰り下げが可能となったので、10年で84%増えます。
年金の増額は一生続くので、繰り下げ受給は人生100年時代におすすめの制度。
老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて繰り下げたり、別々に繰り下げることも可能。
仮に、老齢基礎年金と老齢厚生年金の年金額が200万円の人が70歳まで繰り下げると284万円にもなり、増額した状態が一生涯続きます。
繰下げで年金額を増やせば、公的年金だけで老後の生活費を賄える可能性が高まります。
まとめ
老後資金を準備するのに資産運用は必須ではありません。
資産運用なしで老後を乗り切るためのポイントは下記の通り。
- 将来受け取れる公的年金額の目安を確認する
- 生活のダウンサイジング
- 現役で長く働き、老後を短くする
- 公的年金の繰り下げ受給
最も大切なことは現状を認識して未来を予測し、必要な対策を行うこと。
老後に向けて資産運用は必須ではないですが、何かしらの対策をしないと老後破綻まっしぐらです。
なお、個人的には資産運用はしないよりはした方がベターだと考えています。
物価が上がらないデフレが当たり前だった日本でも物価上昇が日常化する可能性もあります。
不確実性の高い世の中で、収入源は複数あった方がいいのは間違いありません。
人生100年時代は自分が長く現役で働くだけでなく、資産運用でお金にも働いてもらうという考え方も必要ではないでしょうか。