信用金庫などの地方金融機関で、一定期間入手金が止まった休眠口座に手数料を課す動きがあると、日本経済新聞で報道されました。
「不正利用を防ぐだけでなく……」。金融機関にとって、維持するだけでコストがかかる預金口座。休眠口座に手数料を課す動きが信用金庫(信金)など地方で広がる背景を探ります。
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) November 27, 2019
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以前に当ブログでも口座維持手数料について解説しましたが、個人の預貯金口座にもマイナス金利が適用される動きが地方から広がる可能性があります。
今回は、どのような口座が休眠口座と判断されるのかや、今後の大手銀行への口座維持手数料の広がりなどについて解説したいと思います。
- 1.休眠口座とは?
- 2.休眠口座の口座維持手数料額は?
- 3.解約となった休眠口座は復活できる?
- 4.休眠口座に口座維持手数料を導入する金融機関とは?
- 5.いつから口座維持手数料がかかる?
- 6.休眠口座で口座維持手数料を取る理由は?
- 7.りそな銀行では既に休眠口座から口座維持手数料を取っている
- 8.メガバンクでも口座維持手数料は導入される?
- 9.三菱UFJ銀行で不稼働口座に管理手数料導入を検討(2019年12月5日追記)
- まとめ
1.休眠口座とは?
2019年10月に愛知信用金庫(名古屋市)は、休眠口座に手数料を課すと発表しました。手数料の正式名は「未利用口座管理手数料」です。
愛知信用金庫が「未利用口座管理手数料」を課す休眠口座の定義は、下記の通りです。
- 2020年1月以降、新規に開設された普通預金口座
- 2年間入手金がない
- 残高が1万円未満
ただし、借り入れがある場合などは、対象外となります。
愛知信金は、上記口座の名義人に対して未利用口座管理手数料を徴収する対象となったことを郵送で案内します。案内を郵送後、約3ヶ月間で取引がなければ手数料を取られることになります。
なお、対象期間前である2019年12月以前に開設された口座については、2年間入出金がなくても口座管理手数料は掛かりません。
既存口座を手数料の対象とすることは「不利益変更」となるため断念したそうです。
2.休眠口座の口座維持手数料額は?
愛知信用金庫が休眠口座から徴収する口座維持手数料は、年間1,200円(消費税別)です。残高不足等により年間1,320円(消費税込)を徴収できない口座の場合には、自動解約となります。
3.解約となった休眠口座は復活できる?
愛知信用金庫では、休眠口座で口座管理手数料が引き落とせない場合、自動解約となります。自動解約となった口座については、復活(再利用)はできないとしています。
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4.休眠口座に口座維持手数料を導入する金融機関とは?
今回の日本経済新聞の報道では、地方の信用金庫で同様の動きが広がっているとしています。
愛知信用金庫を含め、休眠口座に口座管理手数料を導入する主な金融機関は下表の通りです。
金融機関 | 対象口座開設時期 | 手数料名 | 手数料額 |
---|---|---|---|
岡崎信用金庫 (愛知県岡崎市) |
2016年1月~ | 休眠口座管理手数料 | 1,200円 (消費税別) |
十六銀行 (岐阜県) |
2018年4月~ | 未利用口座管理手数料 | 1,200円 (消費税別) |
蒲郡信用金庫 (愛知県) |
2019年4月~ | 未利用口座管理手数料 | 1,200円 (消費税別) |
奥田信用金庫 (愛知県) |
2019年10月~ | 休眠口座管理手数料 | 1,200円 (消費税別) |
山梨信用金庫 (山梨県) |
2019年10月~ | 未利用口座管理手数料 | 1,200円 (消費税別) |
愛知信用金庫 (愛知県) |
2020年1月~ | 未利用口座管理手数料 | 1,200円 (消費税別) |
おおかわ信用金庫 (福岡県) |
2020年4月~ | 未利用口座管理手数料 | 1,200円 (消費税別) |
5.いつから口座維持手数料がかかる?
休眠口座にはいつから口座維持手数料がかかるのでしょうか?
例えば、愛知信用金庫(名古屋市)の場合、来年(2020年)1月以降に新規開設された口座で、2年間入手金(取引)がないと口座管理手数料の対象となるので、実際に手数料が取られるのは、2022年1月以降ということになります。
休眠口座に対する口座維持手数料の導入が早かった岡崎信用金庫(愛知県岡崎市)では、既に口座管理手数料の徴収が始まっています。
6.休眠口座で口座維持手数料を取る理由は?
なぜ、休眠口座で口座維持手数料を導入する動きが広がっているのでしょうか?
日銀の金融緩和政策の影響で低金利状態が続いているため、銀行や信金などの収益力は下がっています。
そこにマネーロンダリング(資金洗浄)対策やシステム維持費などのコストが重なり、休眠口座に対して口座維持手数料の徴収を決めたとのことです。
ある信金では、1口座当たり概算で年間2千円程度のコストがかかるそうです。
また、口座維持手数料の徴収をきっかけに顧客との接点を作り、収益機会を掘り起こすことも目的の1つとしています。
7.りそな銀行では既に休眠口座から口座維持手数料を取っている
実は、大手行のりそな銀行では、すでに休眠口座から口座維持手数料(未利用口座手数料)を徴収しています。
実質国有化された翌年の2004年から休眠口座の口座維持手数料を導入しているので、すでに15年前から始まっています。
未利用口座手数料の額は、年間1,200円(消費税別)です。
りそな銀行以外にもりそなグループの埼玉りそな銀行や関西みらい銀行で休眠口座に対して未利用口座手数料を導入しています。
上記以外の金融機関では、ローソン銀行も休眠口座に対して年間1,200円(消費税別)の未使用口座手数料を導入しています。
8.メガバンクでも口座維持手数料は導入される?
今回の日経の記事では、3メガバンク(三菱UFJ・三井住友・みずほ)は顧客の反発を招きかねないとして、休眠口座を含め、口座維持手数料の導入には慎重な姿勢としています。
しかし、地方の金融機関ほどではないにしろ3メガバンクも低金利下で収益力が下がっているのは間違いありません。地方で口座維持手数料導入の動きが広がれば、いずれ、3メガバンクも導入を検討するかもしれません。
9.三菱UFJ銀行で不稼働口座に管理手数料導入を検討(2019年12月5日追記)
三菱UFJ銀行が2年間取引のない不稼働口座に管理手数料、年1,200円を導入する計画との新聞報道がありました。
対象は、今後新規に開設される口座が対象で、2020年7月にも顧客に通知し、2020年10月から口座管理手数料を導入する予定のようです。既存の口座に対しては不利益変更となるため、手数料の徴収は当面見送り、検討を続けるとのことです。
三菱UFJ銀行が、2年間取引がない口座に管理手数料をかける検討に入りました。今後の新規開設分が対象。最大手の三菱UFJが動くことで、ほかの大手銀行も追随する可能性があります。#日経イブニングスクープhttps://t.co/FsRhVjcdnb
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) December 5, 2019
最大手の三菱UFJ銀行が口座管理手数料の導入に動けば、他の大手行も追随する可能性が高いでしょう。
なお、三菱UFJ銀行では無料で発行していた紙の通帳についても有料化する方向のようです。1口座あたり年200円の印紙税負担や印刷代などの経費が生じているためとしています。
まとめ
今回の休眠口座への口座維持手数料導入はあくまでも対象期間以降に新規開設された口座が対象で、既存(対象期間前)の口座には導入されません。しかし、今後は既存の口座に対しても口座維持手数料の導入が広がる可能性もあります。
また、現在は地方の金融機関で口座維持手数料の導入が広がっていますが、今後、大手銀行に広がっていくことも考えられます。
個人の預貯金口座に口座維持手数料という形でマイナス金利が適用される時代が到来するかもしれません。
銀行や信用金庫に預貯金をすると、お金が減る時代が確実に近づいてきているように感じます。口座維持手数料が導入されてから慌てなくてもいいように、預貯金以外のお金の置き場所について、今から検討しておいた方がいいのは間違いありません。