三菱UFJ銀行が取引のない口座に対して口座管理手数料の導入を検討しているとの報道がありました。
ついに最大手の三菱UFJ銀行が口座管理手数料の導入を検討することになり、今後、他の大手行への影響などについて注目が集まっています。
【取引ない口座手数料検討 UFJ】https://t.co/a1vVt690EE
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) December 5, 2019
三菱UFJ銀行が2年間取引がない口座に手数料を課す方向で検討していることが5日、分かった。新規に開設された口座を対象とし、2020年10月から年1200円を徴収する案を軸に調整している。
今回検討している口座管理手数料とはどのようなものなのでしょうか?いつから、どのくらいの額を取られるのでしょうか?
三菱UFJ銀行が導入する予定の口座管理手数料や今後の大手行への影響などについて解説したいと思います。
- 1.取引のない口座に導入される口座管理手数料とは?
- 2.無料で発行している紙の通帳も有料化の方向
- 3.なぜ、口座管理手数料を取るのか?
- 4.大手行でも口座管理手数料の導入例がある?
- 5.地方の銀行、信用金庫では口座管理手数料の導入が広がっている
- 6.口座維持手数料も導入される?口座管理手数料との違いは?
- まとめ
1.取引のない口座に導入される口座管理手数料とは?
口座管理手数料とは、2年間取引(入出金)がない口座に対して導入される手数料です。
取引のない口座は休眠口座や不稼働口座などと呼ばれていますが、取引のある口座と同様に維持管理にコストがかかっています。その維持管理コストの一部を口座から徴収するというのが口座管理手数料です。
取引とは?
取引とは、入金や出金です。利息の元本への組み入れも取引には該当しません。口座への入金か、引き落としやATMなどからの出金が取引に該当します。
通帳記入のみでは取引にならず、取引のない未利用口座扱いとなります。
口座管理手数料はいくらとられるのか?
口座管理手数料は年1,200円(消費税別)です。消費税込みでは1,320円となるので、実際に口座から徴収される手数料額は1,320円となります。
口座管理手数料はいつからとられるのか?
三菱UFJ銀行の口座管理手数料の対象となる口座は、新規開設分です。2020年7月にも顧客に通知し、2020年10月から手数料の導入を予定しています。
取引のない既存口座に対する口座管理手数料の導入は見送る方針です。
口座管理手数料に残高が足りない場合は自動解約
口座に手数料額である1200円が入っていない場合、残高分だけ徴収し、残高がゼロになると、口座は自動解約されることになります。
例えば、口座残高が500円だった場合、口座に残っている500円を手数料として徴収し、口座は自動解約となります。手数料に対して残高が足りないからといって、差額を請求されることはありません。
後述しますが、既に同様の手数料を導入している金融機関では上記のような対応を取っています。
なお、自動解約された口座を復活させることはできません。また、自動解約時に口座名義人の手続きは一切必要ありません。
取引のない口座数は?
三菱UFJ銀行の個人口座は4,000万口座程度あるそうで、そのうち2年間取引のない口座は800万口座程度あるようです。
口座名義人の死亡により親族に気づかれずに放置されるなどの理由によって、取引のない口座が増えています。
なお、既存の口座に対しては不利益変更となるため、口座管理手数料の徴収を見送る方針です。今回は見送るだけで、取引のない既存口座に対する手数料の導入についての検討は続けます。
新規に開設する口座を対象に手数料を徴収するだけでは、新しく未利用口座が増えることは防げても、現在の未利用口座は一切減りません。
既存の未利用口座を減らすこともコスト削減に大きく貢献するでしょうから、いずれ、既存口座へも口座管理手数料は導入されるでしょう。
2.無料で発行している紙の通帳も有料化の方向
三菱UFJ銀行では、口座管理手数料の導入だけでなく、 無料で発行している紙の通帳も有料化する方向です。1口座あたり年200円の印紙税負担のほか、印刷代などの経費が生じていることが理由のようです。
紙の通帳は原則廃止されている
実は、三菱UFJ銀行では紙の通帳が原則廃止されています。
2019年6月10日以降に新規に口座を開設する場合、原則として紙の通帳を発行せず、パソコンやスマホで閲覧できる「デジタル通帳」を利用する運用になっています。
ただし、希望者には従来通り、紙の通帳を無料で発行しています。
今後は、紙の通帳を原則廃止し、希望者には有料で紙の通帳を発行する運用を検討しているのでしょう。
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3.なぜ、口座管理手数料を取るのか?
なぜ、取引のない口座から手数料を取ることを大手行の三菱UFJ銀行が検討し始めたのでしょうか?
日本銀行(日銀)の金融緩和の影響で、日本では低金利状態が続いていて、銀行の収益力が低下していることが原因です。収益力の低下は口座管理のコストが無視できないレベルに達しているのでしょう。
一方で、口座管理にかかるコストは、マネーロンダリング(資金洗浄)対策やサイバーセキュリティー対策などで増加傾向にあります。
各種手数料の引き上げや新規手数料の導入などをしないと立ち行かなくなってきていると思われます。
最大手の三菱UFJ銀行が口座管理手数料を導入すると、他の大手都市銀行なども追随する可能性が高いでしょう。
4.大手行でも口座管理手数料の導入例がある?
実は、大手行の1つである、りそな銀行では既に口座管理手数料(未利用口座管理手数料)が導入されています。
実質国有化された翌年の2004年に導入しているので、既に15年前から、りそな銀行では口座管理手数料を導入していたことになります。
手数料額は、三菱UFJ銀行と同じ年額1,200円(消費税別)です。
なお、りそな銀行の取引のない未利用口座の定義は下記の通りです。恐らく、三菱UFJ銀行の未利用口座についても同様の定義になると思われます。
-
- 未利用口座管理手数料は、お客さまの口座が未利用口座となった場合、事前に文書にてお届けのご住所にご案内をさせていただきます。
- ご連絡を差し上げてから一定期間経過後もお取引きがない場合に、年間1,320円(消費税等込み)の手数料をご負担いただきます。 ただし次の場合は未利用口座管理手数料の対象外です。 (手数料のご負担はございません)
- 該当未利用口座の残高が1万円以上である場合。
- 同一支店で、他にお預かり金融資産(定期預金、積立定期預金、財形預金、投資信託(ファンドラップ含む)、外貨預金、国債、生命保険等)が1円以上ある場合。
- お借入れがある場合。
- りそなクラブの代表口座でステータスが「パール」以上である場合。
※盗難、紛失などによりご利用が停止されている口座も未利用口座管理手数料の対象となりますのでご注意ください。
(出典:りそな銀行)
5.地方の銀行、信用金庫では口座管理手数料の導入が広がっている
下記記事でもご紹介しましたが、地方の銀行や信金(信用金庫)では、休眠口座に対しての口座管理手数料の導入が広がっています。
口座管理手数料を導入している主な地方の金融機関は下表の通りです。
金融機関 | 対象口座開設時期 | 手数料名 | 手数料額 |
---|---|---|---|
岡崎信用金庫 (愛知県岡崎市) |
2016年1月~ | 休眠口座管理手数料 | 1,200円 (消費税別) |
十六銀行 (岐阜県) |
2018年4月~ | 未利用口座管理手数料 | 1,200円 (消費税別) |
蒲郡信用金庫 (愛知県) |
2019年4月~ | 未利用口座管理手数料 | 1,200円 (消費税別) |
奥田信用金庫 (愛知県) |
2019年10月~ | 休眠口座管理手数料 | 1,200円 (消費税別) |
山梨信用金庫 (山梨県) |
2019年10月~ | 未利用口座管理手数料 | 1,200円 (消費税別) |
愛知信用金庫 (愛知県) |
2020年1月~ | 未利用口座管理手数料 | 1,200円 (消費税別) |
おおかわ信用金庫 (福岡県) |
2020年4月~ | 未利用口座管理手数料 | 1,200円 (消費税別) |
地方の銀行や信用金庫は、大手都市銀行と比べて更に収益力が下がっているので、先行して、休眠口座に対する手数料徴収が広がっています。
6.口座維持手数料も導入される?口座管理手数料との違いは?
実は、入出金などの取引がない口座に対象を絞った「口座管理手数料」以外に、全ての口座を対象とする「口座維持手数料」があります。
全ての口座を対象とする「口座維持手数料」も導入が検討されています。下記記事でも解説していますが、近い将来、銀行に預金するとお金が減るマイナス金利時代が到来する可能性があります。
まとめ
最大手の三菱UFJ銀行が口座管理手数料の導入を検討し始めたことにより、他の大手行も追随する可能性が高いでしょう。
更に今後、取引のない未利用口座に対する「口座管理手数料」の導入から、全ての口座を対象にした「口座維持手数料」導入の方向へ進んでいっても不思議ではありません。
元本保証が好きな日本では、資産の多くが預金・貯金に偏っていますが、これからは預金・貯金をすると、お金が減る時代が到来する可能性があります。
最近では、口座管理手数料や口座維持手数料について報道されることが増えてきていて、少しずつ、我々を手数料の話題に慣れさせていく作戦なのではないかと勘繰ってしまいます。
口座管理手数料や口座維持手数料が導入されるようになれば、不要な口座の解約や手数料が取られないネット銀行の利用などを検討する必要があります。
また、預金や貯金だけでなく、資産運用についても検討する必要があるでしょう。預金や貯金をするとお金が減る時代が来た時に慌てて、タンス預金などの間違った対策をしないように、今からお金の置き場所について検討することをおすすめします。