「火災保険を使って自己負担なく住宅の修理ができる」などと、保険契約者を勧誘する業者によるトラブルが急増しているそうです。
国民生活センターによると、関連する相談は2020年度に前年度比約2倍の5368件。10年前と比べ約20倍の水準と日経新聞が報じています。
実際に申請代行業者から営業を受け、利用を検討している方も多いかもしれません。
そこで今回は、火災保険の申請代行業者について下記ポイントをご紹介します。
- 火災保険の申請代行業者とは?
- 申請代行業者によるトラブル事例
- トラブルを避けるための方法は?
火災保険の申請代行業者とは?
火災保険の申請代行業者とは、火災保険の保険金請求の申請や書類の作成を契約者の代わりに行う業者のこと。
代行業者には、保険金請求や書類の作成の代行のみを行う業者と、住宅のリフォーム業を営んでいる業者があるようです。
「保険金の範囲内で修理するから自己負担はない」などと、「無料」で修理ができることを強調して電話や訪問販売等で消費者を勧誘しているとのことです。
申請代行の手数料の相場は?
火災保険の申請代行業者の利益はどこから出ているかというと、保険金請求の手続きを代行することにより火災保険契約者から徴収する手数料。
代行業者の手数料相場は契約者が受け取る保険金の30%~40%。高いと50%も請求する業者もあるとのこと。
なお、火災保険の申請代行とリフォームをセットにしている業者は、リフォーム工事で稼げるために手数料が安いケースもあるようです。
火災保険の申請代行業者によるトラブル急増
「保険金で自宅を無料修理しましょう」などと、保険契約者を勧誘する火災保険の申請代行業者によるトラブルが急増しています。
国民生活センターによると、関連する相談は2020年度に前年度比約2倍の5368件。10年前と比べ約20倍の水準。
下図のように2019年度では2,684件だった相談件数が、2020年度には倍増していることが分かります。
出典:国民生活センター
火災保険の申請代行業者によるトラブルは、特に台風・雪害・地震等の自然災害発生後に頻発する傾向がありましたが、直近に大災害がなくても保険金請求の時効3年を持ち出す事例が増えているようです。
2020年は関西で大きな台風が上陸した2017年から3年に当たることから「保険金請求の時効前に保険金を受け取りましょう」という勧誘が増えたそうです。
申請代行業者によるトラブル事例
火災保険の申請代行業者によるトラブル事例にはどのようなものがあるのでしょうか?
国民生活センターのHPには下記のような事例が掲載されています。
- 工務店に壊れていない瓦を外す細工をされ「黙っているように」と指示された
- 事業者の見積もりが杜撰(ずさん)で少額の保険金しか提示されなかった
- 保険で修理可能と言われたのに保険金が下りなかった
- 保険金で修理工事ができると契約したが、工事が杜撰だった
- ポイントサイトでポイントが欲しくて保険申請サポートを契約してしまった
また、相談事例からみる問題点としては、下記のように記載されています。
- 「保険金が使える」と訪問販売で契約しており、長時間勧誘も行われている
- 高額な手数料等が発生することの説明が不十分
- 保険会社をだますような手口の保険金請求が行われている
- 見積もりが杜撰で保険金が支払われなかったり、工事内容が杜撰なことも
住宅の修理業を営んでいる代行業者の場合、契約者が受け取る保険金から高額な申請手数料を請求し、残額を当該業者が行う工事の費用とするケースもあるようです。
保険金から高額な手数料を差し引いた残りの額で修理をするわけですから工事が杜撰になることは容易に想像できます。
また、契約を解約すると言ったら解約料として保険金の50%を請求されたり、修理代金として保険金全額を支払ったのに着工されないなどのトラブルが発生しているとのこと。
なお、故意に雨どいなどを壊すなど、保険会社をだますような手口の保険金請求は「保険金詐欺」に当たります。
「保険金詐欺」が発覚すれば、契約者が損害保険会社から保険金返還請求を受け、契約を解除される可能性があるだけでなく、契約者自身が刑事罰(詐欺罪)に問われる可能性もあるので、注意が必要です。
トラブル内容の詳細については、下記「国民生活センター」の報道資料をご参照ください。
国民生活センター報道発表資料
トラブルを避ける方法とは?
まず、火災保険で補償対象となるケースを確認して頂きたいのですが、台風などの自然災害で損害のあった部分だけで、サビなどの経年劣化は補償対象外です。
また、火災保険の補償対象として保険金を支払うかどうかを判断するのは保険会社であって、修理やリフォームを勧誘してくる申請代行業者ではありません。
ここから申請代行業者とのトラブルを避けるためのポイントを解説します。
修理やリフォーム前に保険会社や代理店に確認する
台風などによる損害個所を修理やリフォームする場合には、修理やリフォームをする前に必ず、契約している保険会社や代理店に連絡・相談するようにしてください。
保険会社に確認せずに修理やリフォームをすれば、補償の対象外で保険金は支払われないという可能性があります。
うその理由での保険金請求はしない
自然災害以外の損害を台風などで壊れたなどと、うその理由で保険金を請求した場合、保険金詐欺で刑事罰(詐欺罪)に問われる可能性があります。
申請代行業者からうその理由で保険金請求をするようにすすめられた場合でも、絶対に断るようにしてください。
クーリングオフが可能
代行業者による勧誘でうっかり契約してしまった場合、クーリングオフの利用を検討しましょう。
特定商取引法では、訪問業者等に対し消費者への書面交付を義務付けています。
書面を受け取った日から8日間以内であれば消費者が一方的に契約を破棄でき、工事開始後も代金が返金されます。
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申請代行業者とトラブルになったら消費生活センターに相談する
申請代行業者や修理業者とトラブルになったり、話の内容に不安を感じた場合には、早めに最寄りの消費生活センターに相談してください。
消費ホットライン:188番
そもそも、台風などの自然災害の後に、飛び込みや電話で修理やリフォームを提案する業者は怪しいと思うくらいの方が安心です。
まとめ
そもそも、火災保険の保険金請求は業者に頼むような難しいものではありません。契約者自身が請求すれば、申請代行業者に支払う法外な手数料は不要。
自宅で火災保険の保険金が請求できるか気になる個所があるのであれば、申請代行業者に依頼するのではなく、保険会社か代理店に連絡してください。
なお、損害保険協会では、2013年度から火災保険請求時のトラブルに関して独立行政法人国民生活センター協力のもと、注意喚起チラシを作成しているほか、ホームページに特設ページを設け、注意喚起を行っています。
更に、損害保険協会は、よりわかりやすく注意喚起を行うため、落語調のアニメーション動画を作成しています。
申請代行業者とのトラブルを避けるためにも、下記動画をご参照ください。
トラブル事例「自己負担ゼロを強調」(台風篇)(2:05)
トラブル事例「強引な勧誘」(台風篇) (2:04)
トラブル事例「うその理由で請求」(台風篇) (2:06)
トラブル事例「保険金請求代行の悪質コンサル」(台風篇) (2:17)