令和6年(2024年)11月1日に改正道路交通法が施行されました。
自転車運転中にスマートフォン等を使用する「ながら運転」(「ながらスマホ」)の罰則が強化されます。
また、「自転車の酒気帯び運転」が新たに罰則の対象とされました。
自転車が関係する事故が増加傾向にある中、罰則強化により抑止を図るのが目的。
更に2026年からは車やバイクと同様、交通違反に対して反則金を納付させるいわゆる「青切符」が導入される予定です。
今回は、自転車の「ながらスマホ」の罰則強化と「青切符」の導入について解説します。
自転車を日常的に利用する方は参考にしてください。
自転車の「ながらスマホ」や「酒気帯び運転」の罰則強化
「ながら運転」に対する罰則
「ながら運転」は走行中にスマホなどで通話したり、画面を注視したりする行為を指します。
これまでは各都道府県の公安委員会規則で禁止され、違反した場合は5万円以下の罰金でした。
11月1日施行の改正道交法で全国で統一した罰則を設けました。
スマホを手で持って画面を注視することはもちろん、自転車に取り付けたスマホの画面を注視することも禁止(自転車が停止しているときを除く)されます。
罰則の内容は下記の通り。
- 自転車運転中に「ながら運転」をした場合
6月以下の懲役または10万円以下の罰金
- 「ながら運転」で事故を起こすなど実際に危険を生じさせた場合
1年以下の懲役または30万円以下の罰金
「飲酒運転」に対する罰則
飲酒運転に関する規制も強化されました。
呼気1リットル中のアルコールが0.15ミリグラム以上の酒気帯び運転を罰則対象に追加。
酒気帯び運転に関する罰則は下記の通り
- 酒気帯び運転
3年以下の懲役または50万円以下の罰金
更に飲酒運転をする恐れがある人に酒や自転車を提供した場合にも罰則が科されます。
これまではアルコールの影響で正常に運転できない「酒酔い運転」のみが罰則の対象でしたが、11月からは酒気帯び運転が罰則の対象となります。
自転車の交通違反に「青切符」の導入
2026年からは車やバイクと同様、交通違反に対して反則金を納付させるいわゆる「青切符」が導入される予定。
これまで自転車の取り締まりは、罰則がない「警告カード」と悪質な違反を行った際に刑事処分の対象となる「赤切符」の2種類でした。
これに加えて車やオートバイなどと同じように交通違反に対し、反則金を納付させる「青切符」が加わります。
対象者は?
自転車の「青切符」は、16歳以上が適用の対象となります。
最低限の交通ルールを知っていると考えられることや、原付き免許などを取得できる年齢であることが考慮されました。
対象の違反行為とは?
「青切符」の対象となるのは、113の違反行為です。
具体的には信号無視、一時不停止、傘を差したりイヤホンを付けたりしながら運転するなど都道府県の公安委員会で定められたものとなります。
個人的に気になったのが傘さし運転。
雨の日には傘をさしながら運転している方も少なくないでしょう。
傘さし運転もながら運転に該当し罰則の対象となります。
では、「さすべい」など傘の固定器具を付けていれば罰則を免れるのでしょうか?
実は、「さすべい」も運転者の視界を遮るということで違反となる可能性があるようです。
傘を自転車に固定して運転することは、使用する環境や方法によっては、視野が妨げられたり、安定を失うおそれのある方法となり得るため、本規定に抵触する可能性があります。
また、傘が歩行者に接触するなどの危険な状況が認められた場合は、安全運転の義務を定めた道路交通法第70条などの違反に抵触する可能性があります。
(出典:広島県警察)
雨の日にはカッパを着用する方が無難でしょう。
いつから青切符は導入される?
「青切符」は法律の公布(令和6年(2024年)5月24日)から2年以内に施行される予定で、2026年から導入される見通しです。
反則金の額は?
多くの方が気になるのは反則金の額でしょう。
反則金は今後、政令で決まりますが、5000円から1万2000円程度になるとみられています。
信号無視などに適用される自転車の違反行為の多くは5000~6000円の反則金が設定されるとみられています。
取り締まりの内容は?
警察庁によると、悪質性・危険性が高くない大半のケースは引き続き「指導警告」を行うとしています。
警察官の警告に従わずに違反行為を継続したときや、違反行為により通行車両や歩行者に具体的危険を生じさせたときなどには積極的に取締りを行うとしています。
取締りを行う悪質性・危険性の高いケースの事例は下図の通り。
(出典:警察庁)
なお、取り締まりの重点対象行為は下記の通りです。
- 信号無視
- 指定場所一時不停止
- 通行区分違反(右側通行、歩道通行等)
- 通行禁止違反
- 遮断踏切立入り
- 歩道における通行方法違反
- 制動装置不良自転車運転
- 携帯電話使用等
- 公安委員会遵守事項違反(傘差し)など
危険な違反行為を繰り返すと自転車運転者講習の受講が必要
交通の危険をもたらす可能性がある行為を繰り返す自転車運転者には、「自転車運転者講習」の受講が義務づけられています。
改正された道路交通法では、「ながらスマホ」と「酒気帯び運転」もこの講習の対象となる「危険行為」に追加されました。
これらの違反行為を3年以内に2回以上犯した場合、都道府県公安委員会から3か月以内で指定された期間に講習を受講するよう命令されます。
この命令を無視して受講しなかった場合、5万円以下の罰金が科されます。
(出典:政府広報オンライン)
まとめ
11月から自転車運転中にスマートフォン等を使用する「ながら運転」(「ながらスマホ」)の罰則が強化されます。
また、「自転車の酒気帯び運転」が新たに罰則の対象とされました。
今後は「青切符」も導入される予定。
これまで以上に自転車に対する取り締まりが強化されるでしょう。
物価高で生活が苦しくなる中、節約するために乗っていた自転車で罰金まで取られる可能性があります。
また、お金だけではなく、自転車運転者講習を受けるとなると時間まで奪われることに。
自転車事故による高額賠償事例もあるので、これを機に自転車も「軽車両」だという認識を持って安全運転を心がける必要があります。